法人名義でのハワイ不動産購入について:購入から銀行口座開設、物件賃貸に必要な書類について

日本の会社名義でハワイで不動産を購入し所有権を保有することを検討中の場合、所定の書類の提出と物件を会社名義で登記するための書類が必要になります。賃貸事業を展開する場合及び会社名義の口座を開設する場合にもさまざまな必要条件があります。

ここでは、日本企業の物件購入手続きがわかりやすく円滑に進むよう解説します。

法人名義での購入に必要な書類
バイヤー(会社)がセラーからの契約内容を受け取ったら、直近に発行された現在事項全部証明書(Corporate Registry)の原本を弁護士に送付し(FedExまたはEMSでの送付が望ましい)確認してもらいましょう。

弁護士には英語の正式会社名を報告する必要があります。例えば、日本の社名が株式会社ABCの場合、英語での社名が「Kabushikigaisha ABC」なのか「KK ABC」とするか、もしくは「ABC Co., Inc.」、「ABC Co., Ltd.」とするかなど。また弁護士は会社の代表取締役や役員のローマ字名も必要です。

弁護士は現在事項全部証明書を英語に翻訳し、これをもとに取締役総会議事録(Corporate Resolution)の英語版を準備します。取締役総会議事録には代表取締役、役員の直筆署名を入れスキャンして弁護士に返信します。(原本である必要はありません。)また、「会社存続証明書(Letter of Good Standing)」の英語版を作成します。日本では、あまり耳にしない「会社存続証明書(Letter of Good Standing)」ですが、この書類の基本的な内容としては会社が自国で合法的に存在し事業を経営していることを確認するためのものです。

弁護士が英語に翻訳された現在事項全部証明書、取締役総会議事録、会社存続証明書をエスクロー会社に送付するとエスクローの担当部署が書類を確認します。(エスクローが選定する)別の弁護士が譲渡証書を作成し、その他のすべての書類も確認します。

注:弊社では通常日本語に精通したハワイを拠点とする弁護士を法人企業のお客様にご紹介しています。

エスクロー会社
エスクロー会社は中立的な第三者機関で、バイヤーの手付金を預かり、物件引渡精算書作成し、弁護士に譲渡証書を作成するよう促します。

売買の初期段階でエスクロー会社から「エスクローオープニングインストラクションズ(Escrow Opening Instructions)」と呼ばれる書類の記入を求められます。様々なことが記載されていますが、そのうち会社名、会社住所、所有権の種類(企業バイヤーは「単独所有権(Tenancy in Severalty)」での所有)、アメリカでの会社のID(保有する場合)、会社が希望する権原保険証書の種類(多くのバイヤーは標準約款を選んでいます)を記入します。エスクロー会社は会社を代表して署名する方のパスポートコピー、場合により役員全員のパスポートコピーを求めます。

その後、事前権原報告書(approval of preliminary title report)、シロアリ報告承認書(acknowledgment of the termite report)、決算承認書(acknowledgment of the settlement statement)、FIRPTA及びHARPTA制度承認書(acknowledgment of FIRPTA / HARPTA forms)、譲渡証書などを含む署名が必要となる書類が登記(所有権の変更日)の約一週間前にエスクロー会社からFedExで日本の住所(日本国外に住所がない場合)に送付されます。

譲渡証書に関しては、公証人立会のもと署名が必要です。ハワイではエスクローのオフィスにて公証可能ですが、日本では、アメリカ大使館にて予約の上公証手続き(https://jp.usembassy.gov/ja/u-s-citizen-services-ja/appointment-system-acs-ja/)、或いは、東京都・神奈川県・大阪府における公証役場で公証手続きとアポスティーユ(外国文書への認証手続が可能)を受ける必要があります。公証役場は一般的に予約は必要ありませんが、事前確認することをお勧めいたします。(アポスティーユに関してはこちらをご覧ください。https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html)

大使館の方が若干安価で約5,000円(要確認)、アポスティーユで約11,500円(要確認)です。

必要な書類全ての署名が揃ったらエスクロー会社にFedExで書類を送付します。(通常エスクロー会社がFedEx返信用ラベルを同封しています)返信はEMSでも良いですが、おおむねEMSよりFedExの方が早い傾向にあります。

一般的に海外の不動産取引経験が豊富な公証人の方が誤りが少ないようです。弊社の経験では、東京のアメリカ大使館及び霞ヶ関の公証役場いずれも滅多に間違いがあることありません。

賃貸事業
会社がオアフ島での賃貸事業を検討中(購入手続き完了後に賃貸)であれば、以下の手続きが必要です。

1) GETライセンスを取得する。約1週間かかります
2) TATライセンスを取得する。約1週間かかります。
3) 商取引消費者部(DCCA (https://hbe.ehawaii.gov/BizEx/home.eb)) で会社登録をする。約1週間かかります。
4) 雇用主番号(EIN)を取得する。約1か月かかります。

注:弊社では一般的に上記の項目に対応できる日本語に精通したハワイの公認会計士をご紹介しています。多くの場合公認会計士は法人登記簿謄本とその翻訳を要求してきます。

銀行口座開設
ハワイで銀行口座を開設する場合は、会社の代表取締役による下記の手続きが必要です。
1) まずはハワイの銀行に出向き面談を行います。代表取締役本人の面談無くして口座開設はできません。
2) 現在事項全部証明書原本とその翻訳を持参します。
3) 会社がDCCAへ登録済であることの証明を提示します。
4) 会社のEINを提示します。
5) パスポートを提示します。

注:弊社は一般的に銀行口座開設が円滑に進むようお客様の銀行での手続きに同行しています。

なお、法人名義で物件を購入した後に賃貸事業を行わない場合、DCCAの登録およびEINの取得なく口座開設できる可能性のある銀行がハワイに一行ありますが、弊社の知る限りそのほかの銀行ではDCCA登録とNIE取得が必要です。

本稿により日本法人名義でのオアフ島不動産購入方法がわかりやすくなれば幸いです。