売主による不動産情報開示書

売主による不動産情報開示書の目的は、法の定めるところにより売主が買主に対し不動産に関する重要な事実を開示することにあります。重要な事実とは、「その発生が現在または過去に関わらず、売却しようとする居住用不動産の価値に明らかに影響を与えると予想されるいかなる事実、状態、欠陥」と定義されています。

売主のみなさん、疑わしきは情報開示です!物件の製氷機が過去10年も故障したままだからといって情報開示しなくて良いわけではありません。買主は製氷機の故障を重要な事実ととらえることもあり得ます!

注:買主が売主の提示した情報開示書に不服がある場合、売買契約書に示された期間内であれば買主が売買契約を解除することができます。

売主による不動産情報開示書の概要

オアフ島では、「セラーズリアルプロパティディスクロージャーステイトメント(Seller’s Real Property Disclosure Statement)」と呼ばれるハワイ不動産協会が作成した5ページにわたる不動産情報開示書の規格フォームがあります。この中には、100項目以上が記載され、質問に対して売主が「はい」「いいえ」「私の知る限りでは、ない」「該当なし」の4つから1つを選んで答える項目もあります。

また、「欠陥、修理、交換(過去及び現在)」のセクションでは、エアコン、床、配管、電気機器、天井など35以上の確認項目があります。該当があれば売主がここにチェックを入れます。

「はい」と答えた項目及び「欠陥、修理、交換」セクションでチェックが入った項目に関しては、売主の記述説明が求められます。

売主による不動産情報開示書の項目一つ一つを見ていくことは非常に重要なことですが、本稿では買主が細心の注意を払って精査すべき部分をさらうことにします。

ご熟読ください…

メンテナンス料(主にコンドミニアムの場合)

売主はメンテナンス料をいくら払っているか、そのメンテナンス料には何が含まれているか(上水道、下水道、ケーブル、インターネット等)を開示することが求められます。

メンテナンス料はどんなコンドミニアムでも時間の経過とともに増額する傾向にありますが、ほとんどのオーナーがメンテナンス料の支払いを自動引落にしているために増額に気づかないことがあります。その結果、売主が開示するメンテナンス料の情報が正確でないことがあります。現在の正確なメンテナンス料を確認するためにも買主は売主に直近のメンテナンス料明細書コピーを提出してもらいましょう。

売主は、実際はメンテンナンス料の中にインターネット料が含まれていないのに含まれていると記載するなど、何が含まれていて何が含まれていないかうっかり誤った情報を開示してしまうことがあります。プロジェクトインフォメーションフォーム(レンダーズディスクロージャーまたはクエスチョネアとも呼ばれる)を必ず見直しましょう。この書類は一般的に買主が売主から受け取るコンドミニアム関連書類一式の中にあり、メンテナンス料に含まれる項目の概要をまとめている場合があります。書類一式の中になければ、コンドミニアム管理組合の管理会社に連絡し確認しましょう。

駐車スペース(主にコンドミニアムの場合)

売主はユニットに何台分の駐車スペース使用権があるのか、割り当てられた専用スペースか否か、屋根付きか否かを明らかにしなければなりません。(情報開示書に番号の記載がない場合)買主は売主に駐車スペースの番号を提示してもらい、オンライン上の公式記録で確認し(多くの場合、各ユニットに割り当てられた専用駐車スペース一覧を見ることができます)、コンドミニアム関連書類で当該ユニットに割り当ての駐車スペースかまたはコンドミニアムの管理人に売主の提示する駐車スペースと割り当てが合致してるか確認しましょう。

許可申請(一軒家及びコンドミニアムの場合)

売主は建築許可なく改修、増築、改築を行った場合、情報を開示しなければなりません。

その程度に大小はあれ多くの不動産オーナーが企画・許可局の適切な建築許可を得ないまま住宅に大規模な配管工事や電気工事などのリフォームを加えます。買主はまずその工事が資格を持った専門家によるものか確認しましょう。工事によってはその分野の専門家を雇い、工事に大きな問題がないか意見を求めるようにしましょう。

懸案中の開発計画(主にコンドミニアムの場合)

売主は、懸案中の開発計画など物件価値に明らかに影響を与えると予想されるようなその地区の重要な事実がある場合、その事実を開示する義務があります。

売主の情報開示の有無に関わらず、買主は眺望の妨げや長期におよぶ過剰な騒音となり得る開発計画がないか確認しておきましょう。その地区や周辺地域に予定される開発計画についてよく理解しましょう。

害虫、シロアリ(一軒家及びコンドミニアムの場合)

売主は、物件内に害虫や木材腐朽生物の形跡または存在が確認された場合、その事実を開示する義務があります。

過去に物件にシロアリが侵入したことがある場合、いつ駆除が行われたか、どのような方法で行われたか、どこの業者が行ったかを把握しておくのが堅実でしょう。例えば、6か月前にキッチンのキャビネットの一部についたシロアリの駆除を行ったとします。未だにキャビネットにシロアリがいる可能性はあるのでしょうか?駆除を行った専門業者の意見を聞くのが賢明でしょう

欠陥、修理、交換(一軒家及びコンドミニアムの場合)

売主は、情報開示書のこの分類に該当するすべての項目について情報を開示する義務があります。重要と考える項目について売主の説明が不足しているまたは不明瞭な場合は、明確な説明を求めましょう。売主が配管の改修工事を行っているにも関わらず、その事実や工事の時期、工事の理由、施工業者の情報を開示していなかったら・・・?その配管工事が(資格を持った配管業者ではなく)なんでも屋のような業者が施工していたら、その物件を安心して購入できますか?

建物管理に関する訴訟(主にコンドミニアムの場合)

売主は、建物管理に関する訴訟がある場合、その事実を開示する義務があります。もし仮に売主が係争中の訴訟について情報開示していなくても、プロジェクトインフォメーションフォーム(または同様の書類)でしっかりと確認しましょう。この書類は一般的に、コンドミニアム管理会社がまとめるコンドミニアム関連書類一式の中にあり、係争中の訴訟があればそれに関する言及があるでしょう。

訴訟と聞くと不確定要素が伴い不安になります。多くのコンドミニアム管理組合では、管理組合元職員が解雇に不満を抱き提訴、開発業者の欠陥工事をめぐり管理組合が提訴、訪問者がロビーで滑り怪我をして管理組合を相手に提訴、など様々な訴訟を経験しています。

では、買主としてはどうすれば良いのでしょうか?これはケースバイケースと言わざるを得ませんが、解雇された職員の訴訟に比べ大規模欠陥工事に関連する訴訟の方が恐ろしく聞こえます。

特別負担金(主にコンドミニアムの場合)

売主は、特別負担金がある場合、その事実を開示する義務があります。もし仮に売主が特別負担金について情報開示していなくても、プロジェクトインフォメーションフォーム(または同様の書類)でしっかりと確認しましょう。この書類は一般的に、コンドミニアム管理会社がまとめるコンドミニアム関連書類一式の中にあります。

コンドミニアムにおいては、特に古い物件で大規模な修繕、改修が必要となり、コンクリート剥離の修理、配管の改修、窓の取り換えや屋根のふき替えなど比較的高くつくことがあります。コンドミニアム管理組合にそのような経費をまかなう予算はないかもしれませんし、資金があってもそのような使途に当てない場合もあります。その代りに管理組合がローンを組み、各オーナーに負担金を課すことができます。支払い方法は、月々の分割払いをメンテナンス料に加算する場合や一括で支払うことができる場合もあります。

コメント、添付資料(一軒家及びコンドミニアムの場合)

売主による不動産情報開示書のセクションQでは、売主が必要に応じて記述式で説明を加えられる部分です。また、開示書に加えて添付資料がある場合はこのセクションで買主に知らせることができます。したがって、買主はセクションQ及び添付資料をしっかりと確認しましょう。

今回は、売主による不動産情報開示書から主なセクションをまとめました。次回のオアフ島不動産の購入時に一助となれば幸いです。