2020年中間マーケット情報

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか大量の失業者とQ-Infinity(無限量的緩和)との間で激しい戦いが続いています。この先は絶望的なのでしょうか?

6か月前、経済は好調、不動産価値は極めて堅調に推移していました。その後何が起きたのでしょうか?そして今後どうなっていくのでしょうか?

今回はハワイの不動産市場動向を探っていきます。

オアフ島不動産2020年年初からここまでの動向

ここでは2020年1月から6月を2019年の1月から6月と比較していきます。6カ月間のデータがあれば新たなトレンドを見極めるにあたり十分な情報といえます。

1か月単位のデータを比較すれば、紙面を飾るようなセンセーショナルな情報が出てきますが、トレンドを見極めるには少々短すぎます。ズームアウトしてより大局的に見ることで短期的かつ不順分なデータに基づく月々の比較で見えなかったことを炙り出すことができます。

2020 YTD

2020年年初からこれまでのオアフ島中間販売価格は、昨年同6カ月と比較して一軒家で1.3%、コンドミニアムで2.1%上昇しています。

失業率が急上昇しているなか、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

関連記事:「オアフ島不動産マーケット最新情報-2020年1月」をご覧ください。

根本的な要因を理解すればハワイ不動産のエキスパートになれるでしょう。これからご紹介する9つのグラフ(2020年5月までのデータ)は2020年6月17日にホノルルボードオブリアルターズ向けのプレゼンテーションを行ったTZ economicsのポールブリューベイカーのご厚意によるデータです。

供給

供給とは、一軒家及びコンドミニアムが何件売りに出されているかを意味します。

供給

2020年3月、4月には供給が落ち込み以後回復傾向にあります。

需要

需要とは、一軒家やコンドミニアムが何件購入されたかを意味しています。

需要

2020年3月、4月には需要が落ち込み以後回復傾向にあります。しかし、グラフにはまだ表れていません。一般的な不動産購入は売買契約書受領日から起算してクローズまでに30日から60日かかります。経済状況の変化が販売件数の数字に表れるのは1か月かそれ以上先になります。

オアフ島中間販売価格

一般的に需要と供給の比率変動は価格変動の予兆となります。供給が低下すると価格が上昇し、需要が低下すると価格が下落します。

新型コロナウイルスによる経済危機が始まって最初の数か月間は供給、需要ともにほぼ等しく低下しました。

中間販売価格にあまり変化は見られていません。

2006年から現在までの中間価格の推移

中間販売価格(2020年5月まで)においては、供給と需要がいずれも低下しバイヤーとセラーの新たな均衡が保たれさほどの変化はありませんでした。2020年6月までのデータをご覧になりたい方はさらにスクロールしてください。

今年前半におきた株式市場の劇的な乱高下は住宅市場には反映されませんでした。株式は取引手数料がかからないことやパソコンやスマホですぐに取引できることから取引が頻回に行われます。

重大な出来事に対する不動産評価額の反応はやや遅れて出てきます。その理由は、株式に比べて住宅は所有期間が長く取引頻度が少ないことがあります。不動産は市場に出すまでの準備期間、エスクローまでのマーケティングに時間を要し、さらにクローズまで30日から60日かかります。

オアフ島の中間販売価格は、1985年以来毎年上昇し当時から70%程度高くなっています。

つまり、歴史的に見てもオアフ島の中間販売価格は毎年前のどの年に比べても最高値となる傾向にあるということです。「ピーク時の価格で買いたくない」という方には困ったことになりますね。

しかし、上昇トレンドとはすべてそいうもので、直近のデータでも最高値にあります。実際、これまでのバイヤー達も当時の最高値に近い価格で買う不安感と戦って購入に漕ぎ着けました。状況は常にこのような状態なのです。

関連記事: 「マーケット高値のなかハワイ不動産を買う方法」をご覧ください。

不動産バブルを期待する?

追加の参考資料を見なければ、「熱くなった市場動向が何の根拠もなく資産価格を押し上げるバブルなのだろうか?」と再び考えるバイヤーいるでしょう。

もしくは、現在の評価額は長期上昇トレンドに沿った通常の需要と供給による作用なのでしょうか?もう少し分かりやすくなるよう掘り進めてみましょう。

2.35%の実質的上昇 – 1980年から2020年まで

市場は時に長期トレンドを上回ったり下回ったりします。統計用語でいう「平均値への回帰」とは長期トレンド(平均値)と比較して極端に高い(バブル時)また低いデータポイントが徐々に平均値に引き寄せられるように戻っていくことを指します。

グラフでは、1980年、1990年、2007年と3度のバブル期が見られ、評価額が一時的に長期トレンドから極端に外れ、その後平均値に戻っていることが示されています。

2010年以降はバブルの兆候は見られません。

連邦政府の金融政策は2%の基準価格上昇を目標としています。実際には数年間にわたり2%をわずかに下回る状況で、大規模な刺激策を講じたとしても今後も2%弱で推移する事が予想されます。

オアフ島不動産の (インフレ前の)名目価格上昇率は年平均4.5%でした。4.5%の名目上昇率から2%弱のインフレを差し引くとオアフ島長期中間販売価格の実質上昇率は物価上昇率を上回る約2.35%となります。

ポールブリューベイカーは「2020年代の資本に対する実質利益の見込みは以前に比べてやや低く、これが住宅価格上昇率を抑える可能性がある」としています。

Months Of Remaining Inventory (MRI)

Months Of Remaining Inventory(MRI)

Months Of Remaining Inventory(MRI)を分析することで市場を別の角度から見る方法もあります。これは現在売り出し中の物件数を月の販売件数で割る方法です。

例:ある地区またはあるコンドミニアムの現在売り出し中物件数が10件とし、過去6ヶ月の販売件数が12件とします。この間の平均販売件数は1ヶ月あたり2件となります。売り出し中10件を1ヶ月の販売件数2件に割ると5MRIとなります。

市場が1ヶ月2件の販売で推移すると仮定すると、現在売り出し中の物件の在庫は5ヶ月で底をつくことになります。

MRIは需要と供給の両方を一つの数字で示してくれます。MRIの値が大きいほど市場の供給過剰が市場を減速させている、つまり価格下落につながる可能性を示しています。かつては、一般的にMRI5~6で売り手市場と買い手市場のバランスが取れているとされていました。

経時的にMRIを比較しているとトレンドの逆転を見極めることができます。

  • MRIが上昇中で5〜6を上回っている時は、市場が買い手市場に傾いています。潤沢な供給に対してバイヤーが少ない状況です。
  • MRIが下降中で5〜6を下回っている時は、市場が売り手市場に傾いています。多くのバイヤー対して供給量が少ない状態です。

2012年以降、MRIの値は4付近で非常に安定しています。バブルの兆候は見られせん。

新たな住宅建設

オアフ島の新築物件数(点線は他島)

ハワイはラスベガスとは異なり、1974年以来オアフ島の供給過剰はあまりありません。つまり住宅建設のバブルは起きていません

アメリカ本土と比較したハワイの建設周期

ハワイの住宅建設周期をアメリカ本土のものと比べてもバブルは見られません

新たなコンドミニアム開発による供給過剰はありえるでしょうか?これもほとんどあり得ないでしょう。新たな建設プロジェクトによる供給は焼け石に水程度です。仮に市場が減速しても、開発計画が延期されるか、中止になるだけです。

関連記事: 「ハワイは新しいコンドミニアムの建築ブーム?」をご覧ください。

裁定取引

先週、近々家を売却するというサンノゼの住宅所有者から電話をもらいました。「サンノゼの住宅価格は限度を超え、崩壊寸前では」と感じ、ハワイへの移住を検討しているそうです。サンノゼとオアフ島の市場を比較してどうでしょうか?

ハワイとカリフォルニアの一軒家中間価格の推移(1975から2020年)

注目して見てみると、過去8年間ホノルルの不動産市場ではその他のいくつかの市場に比べて価格上昇が遅れています。

ハワイとカリフォルニアの都市の一軒家の価格変動(2012年から2020年)

ここでもバブルはありません。今後、さらなるサンノゼマネーがハワイに流入してくるのでしょうか?

資本は世界中のどこからでも入ってきます裁定取引によって、さらに多くの資本がハワイというパラダイスへの道を探し、ホノルルが比較的手頃な市場であることに気づくでしょう。もし、世界中のどこにでも住める経済力があるとしたら、特にパンデミックのなかではホノルルを選ぶのが良さそうです。

パリ、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、チューリッヒ、香港、シンガポール、韓国、日本と比べるとホノルルの不動産価格はお買い得です。

関連記事: 「フランス、パリでの休暇で見えたホノルル不動産の長所」をご覧ください。

この先何が起こるのか

残念ながら、私たちは水晶玉を持っているわけではなく、未来のことは誰にもわかりません。前述のとおり専門家による先行き予測は当てになりません。今回のパンデミックの行方、経済、金融市場、金利、失業率、原油価格、金価格、テスラ社の今後、物価、儲かる株、選挙結果などは予測不能で、不動産市場もそのひとつです。

私たちにできることは限られていて

  • 現在の事実を直視すること
  • そして、単に一意見であり、憶測であり、ヤマ勘であるに過ぎませんが、
  • 過去のパターンから推測する

ことしかできないのです。

弊社では、その時々の事実を逐一お知らせしていきます。しかし、今日の事実は過去の産物であり、私たちが今までに経験したことの反映に過ぎません。以前に直面したことない状況に出くわした場合、過去のパターンから推測するのは不可能です。

ここでじっくり考えてみるべきことをいくつか挙げてみます。

  • パンデミック回復までどれくらいかかるのかは未知です。-第二波、第三波や再びロックダウンがあるのでしょうか?その際にはワクチンが皆に行き渡る状況なのでしょうか?
  • 新たな雇用創出への道のりも未知です。-その他に経済波及効果をもたらす要素は何が考えられるでしょうか?
  • 大型景気刺激策Q-Infinityはなんとか景気が持ち堪え回復するためのものです。―現実のものとなるかもしれない意図せぬ結末にはどのようなことがあるでしょうか?
  • 政治的な駆け引きが余計な分断を生み出し、さまざまな状況で不幸な決断がなされています。―常識や科学的証拠の見直されるのはいつなのでしょうか?

このような疑問の答えが分かれは今後12ヶ月のオアフ島中間販売価格ですら予言できるでしょう。しかし、現状はあまりにも連動する不確定要素が多すぎて、最高レベルの専門家達ですら頭を抱えている次第です。今後の市場の動向を見極めるのは各々に任せることにします。ただし、その前にまだ押さえておく点があります。

考慮すべきその他の要因

引っ越しの理由には、転職、新居の価格が手頃であること、ライフスタイル、家族や友人の近くに住み替えるなどさまざまです。

1)転職、価格が手頃であること

ハワイの観光産業はまるで蒸発したかのごとくなくなってしまい、多くの人は仕事もなく救済策もほとんどないままの状態です。住宅価格の相対的な手頃感は、経済の強さと持久力に依存するものです。ハワイに雇用の機会がなければ、求職者のなかにはより早く景気回復が見込まれるアメリカ本土に新たな生活の場を探し始める人もいるでしょう。

⇒ 本土の住宅価格の方が手頃で雇用条件も良いとなれば、ハワイの不動産を売却する人が出てきて売り物件が増える可能性があります。

2)立ち退きや差し押さえの一時的な猶予措置が新型コロナウイルスの影響で苦境にある借り手、貸し手を支援します。銀行はすでに住宅ローンの返済や差し押さえの猶予を提示しています。これは倒産や差し押さえを最小限に抑えるための大型景気刺激対策のひとつです。ただし、これらの政策も徐々に期限切れを迎え、鎮痛効果も薄れてくるでしょう。浮き輪を失った消費者は果たして泳ぎ続けることができるでしょうか?

⇒ ハワイ居住者がこの苦境から立ち直れない時には、売り物件の増加が予想されます。

3)観光業の停滞は短期賃貸収入にも影響を与えます。短期賃貸収入が減少するとはバケーションレンタル物件の純収益に影響が出てきます。純収益はさらに投資する際にどのような物件が望ましいか、実際に投資可能か否かの判断に影響します。純収益が減少すると投資家の手控えから結果として需要減少供給過剰につながる場合があります。

⇒ しいては投資物件、ホテルコンド、バケーションホームの評価額低下にもつながる可能性があります。

4)高級市場はその価格よりもいかに望ましい物件か、いかに立地条件が良いかに左右されます。富の象徴ともいえる不動産物件は自慢するに値し、超富裕層は経済的打撃を受けにくいです。不透明感の強い投資の世界でも不動産は目に見える投資の形であり、資金の安全な避難先として評価されています。

⇒ 超富裕層の需要はすぐに回復しさらなる市場は値上がりすることが予想されます。

5)ハワイはパラダイスです。生活の質が豊かで素晴らしい気候に恵まれた地球上で最も安全な場所です。ハワイにマイホームを所有する魅力は全く損なわれていません。ハワイは新型コロナウイルスの感染者数が低く、社会不安、暴動、略奪等のない、全米一健康な州とされています。

大都市のバイヤーが生活の質や目的を見直し、クリーンな環境を求めて移住してきます。かつて9.11の後にも同じ現象が起こりました。ハワイで定年生活を送る人や、在宅ワークでという選択肢を選ぶ人もいます。

⇒ ライフスタイルを重視するバイヤーによる需要が高まり市場価格が上昇します。

6)新たな3Dヴァーチャル技術が実現し、バイヤーは物件に足を運ばなくても住宅が購入できます。今回の感染拡大により経済が停滞している間にも、弊社ではハワイを訪れることなく住宅を購入した11人のバイヤーの代理業務を請け負いました。技術に進歩により購入プロセスが簡素化されたおかげで取得原価も安くなりました。

⇒ これは4) 、5) と連動し、需要増加につながる可能性があります。

7)金利はこれまでにないほどの大特価レベルです。30年固定金利ローンを組むには絶好のチャンスです。金利は1月の3.51%から7月には破格の2.98%にまで下落しました。この金利下落で購買力が6.5% 増加し、ローン期間が大幅に短縮されます。

⇒ これにより近い将来に需要増加、市場評価額の強化が見込まれます。

——————————–

まとめ

市場を動かす要因は数多くあります。しかし、住宅バブルは起きていません。供給は低水準、需要は短期バケーションレンタルを除いて安定しています。

下記は直近2020年6月までのグラフです。

需要: 売却物件数
中間価格推移
アメリカの30年ローン金利推移

弊社では、パンデミック、経済状況、金利、政治、天候などの予測は行っていません。そのかわり、お客様ご自身が結論を導くためのデータや手段を提供しています。

最後に

両親と同居でもしていない限り、住む場所は賃貸するか購入するかのどちらかです。賃貸は突然の転居にも柔軟に対応できます。しかし、ハワイに住むと決めているなら長期的に考えて購入という選択肢がベターでしょう。

賃貸するということは大きな成果もないまま家の所有者のローンを支払っているに過ぎず、家を購入するということは、自身の家の支払いをしエクイティを構築していることになります。

価格が下がるのを待って市場のタイミングを計るのは馬鹿げた考えです。

それよりむしろ、買い時はいつなのかを考えましょう。それは

  • 同じ地区に住み続けると決めた時
  • ご自身の経済力で無理なく支払えるふさわしい家を見つけた時、

なのです。

まずはご自身が何を望んでいるのかを明確にし、計画を立て、可視化しましょう。それから夢の実現に向けて必要な最も現実的かつ実現可能な行動を取りましょう。

様々な場面において自身の力がおよぶ限り前向きに努力し人生に幸運を呼び寄せましょう。

マスクを着用し、シートベルトを着けて、通りを横断する時は右左右と確認してから渡りましょう。安全に気をつけ、夢に向けて前進しましょう。