ハワイ不動産-売主の情報開示義務

ハワイ不動産のセラー(売主)は、売却しようとする物件の価値に明らかに影響を与える可能性のあるいかなる事実、状態、欠陥がある場合、その発生が過去または現在に関わらず開示する義務があります。セラーの代理人を務める不動産業者は、クライアントに売主による情報開示書の記入を求めます。情報開示書のフォームはこちらをご覧ください。

時にセラーは物件の「事実、状態、欠陥」を当たり前の状態と思い情報開示義務を軽視してしまいがちです。ある程度の事実、状態、欠陥に慣れてしまい問題に直結するほどではないとみなしてしまうのです。数年に一度発生する集中豪雨の際にだけ地下が浸水してしまう物件のセラーは「ずいぶん前に23回浸水しただけで大した問題ではありません」と言うかもしれませんが、ちょっと待って下さい。よく考えてみましょう!

物件を売却しようとお考えなら、ご自身がバイヤーになったつもりで想像してみてください。たまに起こる浸水被害についての情報を物件購入前に知っておきたいですか?当然知りたいですよね。セラーであるご自身にとっては慣れっこであっても、バイヤーにとってはそうではありません。

ここからは、セラーが危うく情報開示を忘れそうになった実際の例を2件ご紹介します。

1) 居住専用ホテルコンド

昨年、市はホテルコンドのオーナーが物件の用途を「居住専用」にすることができる条例17-013を可決しました。これを申請すると、物件の固定資産税率を評価額の1.29%(ホテル及びリゾート税率)から0.35%(主たる住居としての居住利用税率)に下げることができます。締め切りの91日までに申請されたものが、翌年の71日から始まる翌年度の税率として適応されます。申請のタイミングによっては、申請から実際に税率が適応されるまで10ヶ月から22ヶ月の幅が出ることになります。

問題は、セラーが「居住専用」を申請すると一賃借者あたりの賃貸日数が最低180日という制限が発生することです。また「居住専用」となった物件は、短期バケーションレンタルとしては賃貸できなくなります。物件売却の際、何ヶ月も前に申請した居住専用について開示し忘れてしまうセラーがいます。セラーがこの情報開示を行っていないと、バイヤーはクロージング後になってこの事実に気が付くことになります。

新オーナーが物件の利用制限に違反した場合、居住専用許可は違反があった時点の前の年度にまで遡って取り消されます。バイヤーには違反があった時点の前年度分から税率の差額が追徴され、さらに10%の罰金が課されます。

例:5年間の居住専用となっていたホテルコンドを100万ドルで購入し、このユニットで201811日から短期バケーションレンタルを始めました。この場合の追徴金と罰金にかかる経費は、2016年度分10,340ドル(($12,900 – $3,500 = $9,400 + 10% = $10,340)、2017年度分の半分4,620ドル(12,900 – $4,500 = 8,400 : 2 = $4,200 + 10% = $4,620)となります。12か月+6か月の追徴課税と罰金で合計経費は14,960ドルです。イタイですよね。

2) 将来の開発の可能性

別のブログ記事の中でその素晴らしさと投資収益力についてご説明したとおり、イリカイワイキキホテルコンドのなかでも人気物件のひとつです。2017121日、イリカイのオーナー組合から全オーナーに対して文書が送られ、ハワイ州政府がイリカイの海側にある空駐車場の再開発を行うことが通達されました。現在のところ明らかになっている情報はこちらをご覧ください。

最近、そのイリカイを売却しようとするあるセラーがこの通達文書をバイヤーに対して開示していないことがありました。セラーは、州の開発計画は「以前から周知の事実であり、また具体的な計画は承認されていないため、この件は大きな問題ではない」と反論しました。どうでしょうか?もう一度考えてみましょう。

思い出してください。セラーには、「売却しようとする物件の価値に明らかに影響を与える可能性のあるいかなる事実、状態、欠陥」も開示することが求められています。セラーはバイヤーに対してオーナー組合から文書を受け取った事実を開示する義務があるのです。問題が周知の事実であることや詳細が不明であることはその義務から免除される理由にはなりません。セラーがどう考えるかに関わらず、将来の物件価値に影響を与える可能性があるイリカイの再開発は、バイヤーにとって購入を決断する前に知っておくべき欠かせない情報です。

まとめ

上記の例はかなり明確で常識の範囲で分かりそうなものです。それでも詳細かつ適切な情報開示に対して無頓着な姿勢のセラーがいることも事実で、注意する必要があります。開示すべきかどうか疑わしいときは、開示情報に盛り込んでおいたほうが良いでしょう。

「事実、状態、欠陥」に該当するか否かは見る人次第です。ハワイで不動産を売却しようとするセラーは、バイヤーが将来に備え知っておくべき情報を開示する必要があります。責任ある情報開示を行わないセラーは自らを訴訟の危機にさらすことにもなります。そのようなリスクは回避すべきです。バイヤーは多額の資金を投じてハワイの不動産を購入するわけですから、セラーが開示義務を怠った故の喜ばしくないサプライズを望まないのは当然です。

 

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